INTERVIEW

ブランドと伴走しながら価値を伝える

寺澤 佑那

2019 年入社コピーライター

ーどんなお仕事か、教えてください

「ことば」を軸に人や社会を動かす

「ことば」を軸にして、人や社会を動かす仕事だと考えています。

今の仕事の中で大きなウェイトを占めるのは、テレビCMやデジタル広告、商品の店頭に並ぶPOPやポスター制作です。例えばCMなら、決められた15秒の時間の中で何をどう伝えるのかという構成づくりから、登場するタレントさんのセリフの考案まで、言葉の表現に関わる部分を幅広く担当します。商品やブランドの根幹となる部分をしっかり把握するため、制作の初期から関わって、チームのさまざまな分野の人たちと想いを共有して進めていくことが重要になります。

化粧品のコピーライティングは、単に伝えたいことが伝わればいい、というものではなく、感性に響く言葉、理屈ではないところで心に刺さるような「美」の視点が必要です。また、資生堂にはコピーライター間で共有されている、独特な言葉の佇まいがあります。例えば、日やけ止めの「やけ」には漢字を使わないというような、ディテールや語感に気をつかって表現するところに、資生堂の美意識があると考えています。

ー仕事のやりがいについて教えてください

制約の中で自分の表現を磨き上げる面白さ

学生のときには、ひたすら自分がいいと思う表現をつくっていればよかったのですが、今は、1つのブランドや商品に多くの人が関わり、表現形態もさまざまなものがあります。その中で全体のことを考えながら、自分の表現をどう磨いていくかを追求するところに、仕事の面白さを感じています。例えば、コピーをこう直してくださいというリクエストが来たとき、そのまま反映すると、クリエイティブとしては面白みがなくなってしまうこともあります。そのときにはディスカッションをしながら、より良い表現を模索して磨いていきます。その作業が非常に難しくて苦労はするのですが、自分だけでは行き着けない表現に着地することもあり、やりがいもすごく感じます。

ーより良い仕事のための工夫やこだわりを教えてください

とにかく考える

コピーライターは書く仕事ではありますが、実は、書くために考える時間が膨大にあります。煮詰まったときには散歩をしますが、歩いているときにも常に何かを考えています。また、考えたことを仲間と議論する時間も、とても大切にしています。

常に手放せないのは、ノートです。考えたことを書き留めたり、会議中にメモを取ったり。コピーを書くときも、とにかくたくさん考えて、まだ形になっていないものでも書き出してみます。テレワークではパソコンでタイプすることも増えましたが、やはりノートに鉛筆で身体的に書くことで、新しい視点が出てきたり、考えがまとまったりする気がします。

ー入社を決めた理由は何ですか

資生堂の宣伝部にずっと憧れ

私は大学で情報系の勉強をした後、大学院の映像研究科に進み、その後しばらくフリーで映像制作をしていました。その中で広告に興味を持って調べていると、昔の資生堂のポスターやコピーなどの尖った表現に行き合うことが多かったのです。資生堂の企業文化誌『花椿』も、すごくかっこいいと思って見ていました。資生堂の宣伝部の存在はずっと知っていて、憧れを持っていました。

インハウスのクリエイターに魅力を感じた

じっくり腰を据えて長いスパンで商品やブランドと向き合い、伴走しながらその価値を伝えていけるという、インハウスのクリエイターならではの仕事にも魅力を感じました。

広告に興味があったので、学生時代は広告代理店などにも関心はありました。でも、クライアントの依頼に合わせて短期集中のプロジェクトを行うことが多いイメージで、私には向いていない気がしたのです。私はじっくり考えるのが好きな熟考タイプで、長距離走的な性格。それで、インハウスは自分の性質に合うのではないかと考えました。

ー印象に残る仕事を教えてください

マジョリカ マジョルカの商品名開発

マジョリカ マジョルカのネーミングは独特の世界観を持っていることで知られていて、私も採用試験のエントリーシートに、印象に残っているコミュニケーションとして挙げていた記憶があります。そのブランドの限定商品の名前出し会議に、先輩に誘われて出席しました。「海の底で見つけたトランク」というテーマに沿って、みんなでとにかくたくさん案を持ち寄って、ブランドチームとディスカッションしながら決めていくプロセスでした。その結果、私の提案した色の名前が採用されて。思わず妹にもプレゼントしてしまったくらい、すごく嬉しかったです。

ウェブ花椿のトップバナーのあいさつ

憧れの『花椿』のウェブサイトのリニューアルで、トップページの企画会議の段階から参加しました。「花椿が贈る季節のあいさつ」というテーマが決まり、最初の更新がちょうど梅雨の時期でした。雨の音を擬音化し、ウェブページをスクロールする手を少しでも止めてもらえるような不思議な言葉にしたいといろいろなパターンを模索して、最終的にこの表現になりました。この企画では、私の言葉からイメージしたグラフィックを制作してもらうという方法でページがつくられ、「言葉から世界が生まれる」というとても贅沢で幸せな経験ができた仕事でした。

エリクシールのサステナビリティキャンペーン

エリクシールのサステナビリティ対応の取り組みをお客さまに知っていただくためのキャンペーンに、ブランド担当のコピーライター3人で臨みました。マジョリカ マジョルカと花椿では、感性がくすぐられるような直感的な言葉選びを意識したのに対して、この仕事では、丁寧なストーリーづくりに力を入れました。最終的に表に出たのは「エイジングケア。それは、未来を想うケア」というタグラインですが、これだけを考えたのではなく、短い宣言文、ムービー、ウェブサイトなど、スキンケアブランドがなぜ環境問題に取り組むかを伝えるためのさまざまな言葉や素材をつくりました。また、このプロジェクトにはアジア向けのものもあったため、英語のコピーライターと協働できたのもいい経験になりました。

ー働く環境や周りの方々との関わりについて教えてください

産休・育休も復帰も日常の光景

子育てと仕事の両立が、とてもしやすい環境です。私は今年(2024年)の4月に育休から復帰したのですが、会社全体に産休・育休も復帰もごく日常的な出来事という空気があり、成長の機会が失われるといったことは全くなく、すぐにどんどん仕事ができています。制度ももちろん整っているのですが、その温かくてオープンな空気感が何よりありがたかったです。周りを見ても、両立されている先輩はたくさんいて、ロールモデルも相談相手も豊富なことはとても心強いですね。

ー今後の目標について教えてください

「次世代のコピーライター」を目指して

入社1年目の頃にコピーライターの先輩に言われた言葉が、今も印象に残っています。「寺澤さんには、次世代のコピーライターになってもらうから」という言葉です。新人のころはまだ、コピーライターといえばキャッチコピー1本で勝負、というようなイメージがあったのですが、もっと広い視野を持った新しいコピーライターになってほしいという意味だと思っています。実際、メディアの表現形態は非常に幅広くなっていて、テレビCMで響く言葉とSNSで目を引く言葉は違います。メディアが変われば、言葉や表現自体も変わらなくてはなりません。今後、私がまだ知らないメディアも出てくると思いますが、そういうものにもしっかり対応できるようになりたい。そして、まだ誰も見たことのないような表現を生み出す企画力と、資生堂らしい美意識や繊細な感覚を両立させられる「次世代のコピーライター」になるのが目標です。