MY CRAYON PROJECT 実施レポート

広告電通賞 最優秀賞など数々のアワードを受賞した「肌色」から個性を学ぶ授業

 資生堂クリエイティブ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:山本 尚美)は、クリエイティブで美の体験価値を提供する企業として、インクルーシブな社会の実現に向けた様々な活動を展開しています。そのひとつ「肌色」から人の多様性や自分らしさを学ぶ教育プログラム「MY CRAYON PROJECT」は、2018年にR/GA(本社:米国ニューヨーク、グローバルCEO:ショーン・ライオンズ(Sean Lyons))と共に開発し、第73回広告電通賞 ブランドエクスペリエンス最高賞、「Spikes Asia 2018」 Bronzeなど数々のアワードを受賞しました。横浜市を中心に社員が教室に出向き講師となる出前授業を継続的に実施し、2022年12月には横浜市立平沼小学校で授業を開催、累計約450人の小学生が受講いたしました。

■実施背景 日本人のほとんどは「肌色」を1色と認識している

日本人の79%※は「肌色」を薄だいだい色と考えています。一方で、100年以上にわたり肌の研究をしている資生堂の研究によると、「肌色」は人の数だけそれぞれの色がある、無限の色です。「MY CRAYON PROJECT」は、そんな資生堂の知見と、プロダクト開発からコミュニケーション設計までを一貫して行う資生堂クリエイティブの体験デザインという強みを掛け合わせ、個性や自分らしさについて、肌をテーマに直感的に学べる授業をデザインしました。

※この数値データは、2017年12月6日〜7日に当プロジェクトが実施したWebアンケート調査(有効回答数:520)によります。

肌色だけのオリジナルクレヨン

■特別にデザインされた肌色だけのクレヨン

授業では、特注で作られた肌色のみで構成されるクレヨンを使用します。このクレヨンは、通常のクレヨンとは違い、各色に名前がついていません。最も自身の肌に近いと感じた色に児童が名前を書き入れることで初めて、自分の色としてクレヨンが完成します。この自分だけのクレヨンは、それぞれの個性を大事に持っていてほしいという願いを込めて、授業後に児童へプレゼントされます。

 発足から5年。筆圧の薄い低学年にも書きやすいようにクレヨンの設計を見直したり、授業を受ける学年に応じて発達段階に沿ったケアを行うなど、回を追うごとにプログラムをアップデートしてきました。また、児童の視野を広げるためにも世界における肌色の分布図を取り上げるなど、日本国内で授業を展開するにあたり様々な工夫をしています。

 そういった特別なプログラムによって、子どもたちは感覚的に、人と違っていることは当たり前であることや、それぞれの個性とその違いを認め合い、大切にすることを学んでいきます。

クリエイティブディレクター 小助川雅人

「MY CRAYON PROJECT」は、ダイバーシティについて実感する機会が少ない日本の子どもたちに向けて、資生堂クリエイティブが提供する、肌を通じて一人ひとりの「個性」を学ぶプログラムです。肌の研究を続けてきた資生堂だからできるこの活動を通じて、誰もがちがうこと、そのちがいを尊重することを体験してもられえれば、と思っています。コロナ禍という状況の中で、実施の機会も限られていましたが、子どもたちが懸命に自分の色をさがす姿や、似顔絵ができたときの嬉しそうな顔に、私たちもいつも喜びをもらっています。今後も少しずつでも続けていければ、と思っています。

 

横浜市立平沼小学校での出前授業 実施レポート

平沼小学校では2021年に引き続きご希望をいただき、2022年12月17日(土)に2回目となる出前授業を実施いたしました。

 

■肌色について学ぶ

 授業は「この色をなんと呼んでいますか?」という児童たちへの問いかけから始まります。それぞれが持っているクレヨンの中に必ず入っているその色は、多くの児童が「薄だいだい色」「肌色」と同じ名前で答えていました。
 一方で、世界には様々な肌の色をした人々がいます。一見同じ肌色に見えるけれど人によって肌の色は違うということを、肌色を測定する機器とその色相・明度に応じた分布を示すマップを用いて学びました。
 希望した児童のほほの肌色を実際に測定し、肌色の色相と明度を計測、肌色のマッピングを行いました。それぞれの肌色が全く異なる場所に位置することに、児童からは「すごい、同じに見えるけど全然色が違うね」など驚きの声が上がりました。
 測定を希望する児童は長蛇の列となり、児童たちは楽しみながら、それぞれの肌の色の違いについて考えました。

■自分の色をさがす

 肌の色は同じに見えてもそれぞれ色が違うことを学んだ後は、クレヨンの中から自分の肌色に近い色を探します。
 児童は「自分のクレヨンの肌色は1本しかないので、肌色は1色だと思っていた。こんなにたくさんの色があるとは思わなかった。」など、初めは色の多さに少々戸惑っていた様子。
 手鏡を見ながら自分でクレヨンを肌にあててみたり、友達同士で色をあてあったり、講師である資生堂クリエイティブのクリエイター達に「このクレヨンの中にもこれだ、という色が無かったら混ぜてみてもいいんだよ」などとアドバイスを受けながら、真剣に自分の色を選んでいました。

■自分の色で自画像を塗ってみる

 「いつも絵をかく時は何も考えずに肌色を塗っていたが、いざ自分で選んでみると難しいと感じた。」など、様々な肌色クレヨンがあっても、なかなか自分の色を探すのは難しい様子。2色や3色の肌色を混ぜて自分の色を完成させたり、顔の色と首の色の違いに着目して肌色を使い分けたりする児童も多く、子ども達は思い思いの自分の色にこだわって、自画像を完成させました。

■自分の色を言葉で伝える

 最後に完成したそれぞれの自画像を並べ、他の児童たちの前で自画像について説明する機会を設けました。並べてみるとそれぞれ選んだ肌色が異なること、また自分の好きな物や色を絵の中にちりばめている児童が多く、それぞれ全く違った仕上がりになっていることに気が付きます。自分だけのこだわりのポイントを友人たちに共有し、また共有されることで、この違いこそが個性である、ということを学びました。

 体験した低学年~高学年の子ども達からは、「肌の色が違うようにそれぞれに個性があることが分かった」「誰かと同じ色だと思っていたけど全然違う色だったので驚いた」「肌色という色は無いんじゃないかと思った。同じ日本人でも地肌の色は違うから、肌色は世界に何個もあるんだなと思う」「人それぞれ持っている色は違うけどそれもまたいいなと思った」「これから自分の個性もみんなの個性も大切にしていきたい」など、個性が何かを体感し、違いがあるからこそ面白い、というダイバーシティ&インクルージョンの根底の考え方を感覚的に学んだようでした。

 

今後もご希望いただいた学校を対象に、継続的に本教育プログラムを提供いたします。

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